『興國高校式Jリーガー育成メソッド ~いまだ全国出場経験のないサッカー部からなぜ毎年Jリーガーが生まれ続けるのか?~』より

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『興國高校式Jリーガー育成メソッド ~いまだ全国出場経験のないサッカー部からなぜ毎年Jリーガーが生まれ続けるのか?~』
(内野智章 著)
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未だに全国大会出場経験のない興國高校サッカー部
だが、このサッカー部から毎年Jリーガーが生まれ続けている

その秘密は勝利よりも育成に重きをおいた指導にあった
勝つことが指導者の価値ではない

・差別化を図らないと生き残れないのは、どの業界も同じ
・骨折したらAチームの選手が驚くほどうまくなっていた
・時間がないのでプロセスや建前は度外視して、僕が言い続けることによって1日でも早く身につけさせなければ
・選手と話し合ってください。まずはそこから
・自分のストロングポイントと、その国のマーケットが欲しがるタイプが合致したときに、はじめて求められる選手になる
・初めて見た人に対して「この選手はどういう選手か」がわかるようにしたい
・今まで学んできたことと、教わってきた小学生、中学生時代の指導者をリスペクトしなさい
・感情に訴えかけることの大切さ
・謙虚さをどうやって保つかは、この仕事をしている間は常に意識し続けなければいけない
・自分がどういう選手になりたいかをイメージしましょう
・一番やってはいけないのが、子供と一緒に指導スタッフの文句を言うこと。
・試合に勝って評価されるのは、プロだけでいい

・差別化を図らないと生き残れないのは、どの業界も同じ

足が速くて、めっちゃ技術あるやん」という驚きがないと、プロから声はかからないんです。

というのも、足が速い選手も、技術のある選手も、Jクラブのユースには一人か二人は必ずいます。

自分のクラブのアカデミーにいるので、わざわざ他のチームから獲得する必要がないですよね。

Jクラブのスカウトは、自分のクラブのアカデミーにはいないタイプの選手を探しているので、そういう選手に仕立て上げないと、プロから声がかからないんです。

差別化を図らないと生き残れないのは、どの業界も同じ

・骨折したらAチームの選手が驚くほどうまくなっていた

村田は2年生の時、サブ組の試合に出るのも厳しいほど、自信をなくしていた時期もありました。  

いまとなっては笑い話なのですが、高2の秋に手を骨折したんですね。

高校選手権の予選を一ヶ月後に控えた時期です。

手に力を入れられないので、常に脱力した状態でプレーしなければいけない。

そうなると、いままで雑だったトラップが、全部ピタッと収まるようになったんです。  

当時の3年生で、いまは清水エスパルスでプレーしている西村たちが「透馬、めっちゃうまくなってない? 全然ミスせえへんやん」ってざわつき始めて、そこから一気に凄い選手になりました。

もともと足は速いし、頑張ってドリブルの練習もしていたので、ボールを取られなくなったんです。

骨折する前はサブでも使うのはしんどかったのに、骨折したらAチームの選手が驚くほどうまくなっていたという

・時間がないのでプロセスや建前は度外視して、僕が言い続けることによって1日でも早く身につけさせなければ

先日も1年生で180 cm 以上あって、身体能力の高いセンターバックの選手に対して、ボールコントロール、パスの選択について、練習中にめちゃめちゃ詰めました。

近くで見ている人が引くぐらい、強い口調で言いまくりました。

でも、それぐらい言わないとわからないんです。

なぜなら、クラブチームだったらジュニアから 18 歳、 19 歳まで長い年月をかけて指導できますが、興國は高校の部活なので、実質2年間しかありません。

高3になると、大学やプロに行くために大会で結果を出すフェーズに入っていきますから。  

そう考えると、選手が自分で気がつくのを待っている時間がないんです。

もちろん、大きな意味ではボトムアップ的な指導も大切です。

だけど、サッカーの技術、戦術に関しては、時間がないのでプロセスや建前は度外視して、僕が言い続けることによって1日でも早く身につけさせなければいけません。

だから、1年生のときから、めちゃめちゃ言います。

中学生なら、自主性に任せて気がつかせる指導でもいいのですが、高校生になるととにかく時間がないんです

・選手と話し合ってください。まずはそこから

よく「どうやって学べばいいのですか?」と聞かれるのですが、答えは簡単です。

選手と話し合ってください。まずはそこからです。

僕は選手に「今日の練習、どうやった?」としょっちゅう聞いています。

「何が目的かわからなかったですね」と言われたら、どうすればいいかを考えて改善します。

選手を見て、こいつがもっと凄い選手になるためには、何が必要なのかをずっと考えています。

だから色々なポジションで起用したり、体操をさせてみたり、陸上部と一緒に練習をさせてみたりします。

研究してトライアンドエラーを積み重ねて、フィードバックを受けて改善という作業をひたすらやっています。

そのためには当然、選手にも話を聞く必要があります。

選手が乗り気ではない、意味がわかっていないのに、あれこれ練習させても身にならないですからね。

自分に足りないのはこれか。これができればもっといい選手になれるとわかったら、必死に取り組みます

・自分のストロングポイントと、その国のマーケットが欲しがるタイプが合致したときに、はじめて求められる選手になる

日本人が海外でプレーするときは基本的には助っ人なので、その国の選手よりも秀でている部分がないとダメですよね。

なぜなら自国人と同じレベルの選手を、高いお金を払い、外国人枠を使って獲得する意味がないからです。

「スペインのパスサッカーが好きだから、将来はスペインでプレーしたい」という気持ちはわかるのですが、そのポジションにはスペイン人で凄い選手、いっぱいおるでと。

助っ人にならへんでと。

スペインにはいないタイプの選手にならないと、スペインサッカーで必要とされないわけ

ドイツで日本人が活躍できるのは、大柄な相手に対して、スピードと敏捷性で太刀打ちできるからです。

その国にいないタイプの選手でないと、欧州の強豪リーグで活躍することはできません。

意外と、それをわかっていない人が多いと感じます。

「将来はヨーロッパでプレーしたい」という夢を持っている子どもたちは、どこまで具体的にイメージできているのでしょうか。

自分のストロングポイントと、その国のマーケットが欲しがるタイプが合致したときに、はじめて求められる選手になるわけ

そのために重要なのが「選手自身が楽しんで練習をする環境をいかに作るか」だと思います。

いやいや練習をさせられても、決して上手くはなりません。

「この練習、なんの意味があるのかな?」と思いながらやっても身につかないですよね。

それは大人も同じだと思います。

「この仕事やっとけ」と上司に言われても、なんのためにそれをするのかがわからなかったら、気が進まないし、ただこなすだけになるじゃないですか。

でも、「この仕事は、こういう意味があるから」と説明されれば、大概の人は「なるほどな」と理解して頑張りますよね。

サッカーもそれと同じ。僕が監督だからといって、偉そうに「この練習やっとけ」と言ってやらせても、上手くはならないです。

だから、グアルディオラの練習をYouTubeで見て、その通りやらせても上手くなりっこない

・初めて見た人に対して「この選手はどういう選手か」がわかるようにしたい

興國は大学生とも試合をするのですが、「大学生相手に個の力で負けているようでは、プロには行かれへんで」と言っています。

だから、相手が大学生であっても、守備ブロックを作るリアクションサッカーはしません。

フルコートマンツーの勢いで、前から行って真っ向勝負します。

それで負けても失うものはありません。

一方でチームとして組織を作って勝っても、選手自身が得るものはあまりないです

大学の監督から言われるのが「興國の選手は、良くも悪くもはっきりしている。

だからプレーを見ていて、この選手はウチに合うな、必要やなというのがわかりやすい」と。

「他の高校やJのユースを見ても、グループで守って攻めているので、どの選手が良いのかがわかりにくい」とも言っていました。

僕としても、選手たちにプロに行ってほしい、大学で活躍してほしいと思っているので、初めて見た人に対して「この選手はどういう選手か」がわかるようにしたいという思いがあります。  

Jクラブのスカウトの方に「選手の能力を六角形にしたら、自分のクラブの

・今まで学んできたことと、教わってきた小学生、中学生時代の指導者をリスペクトしなさい

興國に入学してきた1年生には「まず、今まで学んできたことと、教わってきた小学生、中学生時代の指導者をリスペクトしなさい」と言います。

その上で「これまで身につけてきたことを一度リセットして、これからサッカーに取り組んでほしい」と伝えます。  

非常に言い方が難しいのですが、ジュニアユース時代にその選手が身につけてきたものと、興國のスタイルが合致しないところが多いからです。

もちろん、僕自身、その選手が過去に所属していたクラブも、指導者もリスペクトしています。

ただ、指導で身につけてきたことの多くが、僕らが興國で求めているものとは違うので、一度忘れてもらわないと新しいものが入らないのです。

ただしこれは、繰り返しになりますが、ジュニアユースでの指導を否定しているわけではありません。

もちろんリスペクトはしています。

その上で、僕が目指す興國のスタイルにどう適応させるかという話

・感情に訴えかけることの大切さ

練習中に選手にキレる  

その先生からは「感情に訴えかけることの大切さ」を学びました。

興國の練習を見に来てもらえるとわかると思うんですけど、僕は時折、めちゃめちゃ選手を詰めます。

前にパスを出せるのにバックパスをしたときや、判断ミスで味方に迷惑をかけるプレーを繰り返す選手には「なにしてんねん!」と。  
めっちゃキレているように見えるので「興國は育成やとか言っているけど、あの監督、選手にめっちゃキレてるやん」とかインターネットに書かれるんですよ。  

一般の人が見たらスレスレですけど、選手たちはわかってくれていると思います。

なぜなら、練習中に僕が鬼ギレした選手は、絶対に試合で使うからです。

大学やプロに行く可能性の高い選手ほど、プレーに関しては厳しく要求します。

その姿が、監督が選手にキレているように見えるんですよね。  

中学時代の恩師から教わった言葉に「怒られ役」というものがあります。

サッカー部の中心選手に「お前らは怒られ役やから」といって、学年集会で静かにならなかったり、全体がダラダラしているときに、むりくり理由をつけて

その先生は「中心選手や、クラスのややこしいヤツらを怒れない先生はあかんねん」と言っていました。

・謙虚さをどうやって保つかは、この仕事をしている間は常に意識し続けなければいけない

高校の先生で多いのが、プライドが高くなった結果、他人に頭を下げられなくなっている人です。

僕はそういう反面教師をたくさん見てきたので、なるべく謙虚にいることを意識しています。

できるだけ、相手の年齢にかかわらず敬語で話すようにしていますし、話しかけやすい雰囲気でいるのは大切だと思っています。  

良いサッカー選手を育成するためには、指導者側がサッカーの知識だけでもダメ、人間教育だけでもダメなので、常に勉強の毎日です。

サッカーの情報も積極的に取り込みますが、時間があるとビジネス系の本を読んだりもしています。

成功した人の格言も好きですし、松下幸之助さんや山本五十六さん、本田宗一郎さんの本を読むと、みんな言ってることは同じなんですよね。

「実るほど頭を垂れる稲穂かな」ではないですが、周りのおかげというのを忘れてはいけません。

学校の先生は年下の生徒とばかり接しているので、気がついたら偉そうになってしまうんです。

だから、謙虚さをどうやって保つかは、この仕事をしている間は常に意識し続けなければいけないと思います。  

成功している人、結果を出している人は全員研究熱心ですよね。

それに加えて、人間的な魅力もある。

・自分がどういう選手になりたいかをイメージしましょう

仕事柄、進路について多くの相談を受けます。

中学生や親御さんには「まず、この学校に3年間通うことをイメージしてみてください」という話をしています。  

希望の学校の練習に参加して、その場所で3年間練習をするイメージを持つこと。

そして「その学校で活動して、3年後に自分がどうなっているかを、明確にイメージできるところに行った方がいいと思いますよ」と言っています。  

3年後のビジョンが描けないのに、ネームバリューに惹かれて行っても良いことはないと思います。

目標が「選手権やインターハイなどの全国大会に出て、優勝すること」であれば、大阪府内の私立であればチーム力は拮抗しているので、どこに行ってもチャンスはあると思い

中学生にアドバイスをするならば、第一に「自分がどういう選手になりたいかをイメージしましょう」です。

自分の特徴を見極めて、そこを伸ばせそうなチームに入った方が、プロになるというゴールを見据えた時にはいいかもしれません。

ネームバリューに惹かれて行くのではなく、サッカースタイルや自分と似たようなタイプの選手がどんなプレーをしているかを、よく見た方がいいでしょ

・一番やってはいけないのが、子供と一緒に指導スタッフの文句を言うこと。

息子さんの試合を見に来るのは大歓迎。

保護者にも「見に来てあげてください」と言っていますが「サッカーのことに関しては、あまり言わないであげてください」と念を押しています。  

それよりも、息子さんが、僕ら指導スタッフに不満があるのであれば、文句を聞いてあげてください。

そこで、「そうなんや、大変やな、頑張りや」と言ってあげるだけで、ガス抜きになりますから。  

そこで一番やってはいけないのが、子供と一緒に指導スタッフの文句を言うこと。

そうなると、軌道修正ができないので伸びません。

「監督にそんなこと言われたんか。大変やな」と聞いてあげて、どうしても我慢できなければ、子供の知らないところで、僕に直接意見を言いに来て下さい。  

ただ、誤解してほしくないのは、あなたの子供のために興國サッカー部があるのではないということです。

チームの理想を追求するために選手がいて、僕はその理想を追求するために、チームのプレーモデルをより高いレベルで実行できる選手を選ぶわけです。

そこで、「いや、私の理想はこうだから」と選手や保護者から言われても、僕にはどうすることもできません

いいサポーターになってください。

評論家はいりません。

保護者が評論家になって「監督のサッカーはこうだから」と言い出すと、子供も頭でっかちになって、現実から目をそむけてしまうんです。  

自分の技術や努力が足りていないのに、監督のせいにしてふてくされてもいいことないですよね。

社会に出たときに、上司は選べません。

でも、自分で入りたくてその会社の面接を受けたわけですよね。

それならば、どうすれば上司に認められるか、自分に求められているものはなにかを考えながら、努力をしていくしかないんです

・試合に勝って評価されるのは、プロだけでいい

僕は試合に勝って評価されるのは、プロだけでいいと思います。

育成年代の指導者がすべきは良い選手を育てること。

それに対して金銭面も含めて評価されるシステムができれば、日本は育成大国になると思います。

優秀な指導者はたくさんいるのです

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