『10代の時のつらい経験、私たちはこう乗り越えました』
(しろやぎ 秋吾 著)
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題名には「乗り越えました」とありますが、ほとんどのエピソードが乗り越えていません。
でも、それが逆に読者の救いになっています。
時間があれば読むべき本だと思いました。
マンガです。
目次
友達から無視された話
ゲイであることを悩んでいた話
いじめの加害者から被害者になった話
先生との恋愛の話
両親が不仲だった話
耳が聴こえなくなった話
伯父から虐待を受けていた話
実の親に会いに行こうとした話
つらい時に支えてくれた友達の話
美術の先生との話
校則に反対する話
学校ではしゃべることができなかった話
それぞれに大変深刻なエピソードが語られます。
ごく稀に解決してハッピーになりますが、ほとんどのエピソードに解決がありません。
また、一見解決したように思えても、問題は奥深いところにいつまでも潜んでいます。
しかし、問題が解決することが読者を救うとは限りません。
当事者の方には申し訳ないのですが、問題が解決してしまうと、同じ悩みをもった読者は置き去りにされてしまいます。
結局、自分自身の救いがありません。
しかし、問題が解決されず、当事者の方が今でもその悩みを抱え、それでも今まで生きてきているという事実の方が
むしろ読者を勇気づけるということが分かります。
問題は解決するに超したことはありません。
しかし、解決しなくても、人を勇気づけることができるということです。
この本を読むと、まさにその通りだと思います。
耳が聴こえなくなった話
女子高生である主人公は、原因不明の難聴になります。
数日間耳が聞こえなくなり、ある日聞こえるようになる。
聞こえない日が徐々に増えてく不安。
聞こえるふりしてつきあっている友人。
しかし、やがて友人もだんだんと距離を置くように。
そんなある日、美術の先生が美術部に誘ってくれます。
美術部に行くと、何人もの部員がスケッチブックをもって集まり、イラストと筆談で自然と会話が始まりました。
主人公はそのアットホームな雰囲気に癒やされます。
ある男子部員はイヤーマフを常時付けていて「耳が聞こえない感覚が分かっていた方がいいかと思って」と。
主人公によって、輝く時間になっていきました。
・いじめの加害者から被害者になった話
主人公は小学校時代、ある子をいじめていた。
そのことが分かってしまい、両親とともに平謝りに謝った。
数日後、いじめていた子から反対にいじめ返されます。
それは卒業するまで続きました。
中学校に入学してから、いじめていた相手の子が明るく振る舞っているのを見て、主人公はほっとします。
しかし、どこかわだかまりがきえません。
一緒になって、相手と自分をいじめていた子たちは許されるのか。
自分の非は償いきれないことは分かっているが、いつか救われたいと思ってはいけないのか。
そのようなことを日々思っています。
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