『AIに負けない子どもを育てる』
(新井紀子 著)
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・字が読め、十分な語彙量があっても、不自由なく文章を読むにはまだ不十分
・RST(リーディング・スキル・テスト)で測定するスキル
①係り受け解析…分の基本構造(主語・述語・目的語など)を把握する力
・RST測定するスキル
②照応解決…指示代名詞が指すものや、省略された主語や目的語を把握する力
・RST測定するスキル
③同義文判定…2つの文の意味が同位置がどうかを判定する力
・RST測定するスキル
④推論…基本的知識と常識から、論理的に判断する力
・RST測定するスキル
⑤イメージ同定…文と非言語情報(図表など)を正しく対応づける力
・RST測定するスキル
⑥具体的同定…定義を読んでそれと合致する具体例を認識する力
・アクティブラーニングブームの中で、一人も取りこぼさずに学ばせるためによかれと思って考案された様々な工夫が、アクティブラーニング先進国の日本で、なぜ教科書を読めずに卒業する生徒が3割もいるのかの理由の一つではないか。
・字が読め、十分な語彙量があっても、不自由なく文章を読むにはまだ不十分
行間をくみ取る前に、「行中」を読めるようになるためには必ずできなければならないことがある。
それが、分の作り(構文)を正しく把握したり、「と」「に」「のとき」「ならば」「だけ」など、機能語と呼ばれている語を正しく使えるようになること。
「たくさん本を読ませれば、分の読み方など、自然に身に付くのでは?」と思うかもしれれない。
2016年から2017年にかけて実施したRSTでは、同時にアンケート調査も行った。
その中に「読書は好きですか?」という項目があり、「好き、やや好き、どちらでもない、やや苦手、苦手」の5段階で回答してもらった。
主に読む本の分野も尋ねた。
その結果、RSTの能力値と読書の好き嫌いや、主として読む本の分野の間には、相関は見られなかった。
・RST(リーディング・スキル・テスト)で測定するスキル ①係り受け解析…分の基本構造(主語・述語・目的語など)を把握する力
文節同士の関係を正しく把握するのが、係り受け解析の能力。
この分を例にとると、「山に行ったのは(おじいさん)である」「おばあさんは(川に)行った」というようなことを把握できるかということ。
係り受け解析は、修飾節が長くなったり、並列構造が複雑になったりすると、難しくなる。
意味を理解できるかどうか、関心を持てるかどうかはさておいて、どんな文章を目にしても、「ああ、絶対無理」と諦めずに分の構造を正確に捉えられる能力を「係り受け解析」では測る。
・RST測定するスキル ②照応解決…指示代名詞が指すものや、省略された主語や目的語を把握する力
くどくどと同じことを繰り返さないようにするため、指示詞で置き換えることがある。
これを照応という。
指示詞やゼロ照応(指示詞を用いずに主語や目的語を省略すること)が文章に出現したときに、何を指すのかわからなければ正確に読む進めることができない。
照応先を正しく認識することを照応解決と呼ぶ。
・RST測定するスキル ③同義文判定…2つの文の意味が同位置がどうかを判定する力
同義文判定と推論は、自学自習をする上で、欠くことができない能力。
自学自習する際には、教科書や参考書を読んで問題を解き、自分で丸付けをした上で、間違っている部分を訂正しなければならない。
問題集の記述式の模範解答と、自分の書いた解答が同義であるか否かを判定できなければ、答え合わせはできない。
同義分判定ができないと、自分の答えと模範解答の字面が少しでも違うと、模範解答を丸写しする以外にない。
・RST測定するスキル ④推論…基本的知識と常識から、論理的に判断する力
いわゆる三段論法。
RSTでは、「Aが正しければCが正しい」ということを、Aの文を正確に読解する力と、小学6年生までの学校教育の知識と、生活の中で身につけていると期待される常識から導く能力を「推論」という枠組みで診断。
・RST測定するスキル ⑤イメージ同定…文と非言語情報(図表など)を正しく対応づける力
文章で表現された内容と図が対応しているかどうか見極めるのがイメージ同定力。
係り受け解析や照応解決、同義文判定の市場は、文章の意味を理解していなくても、パターンでもある程度解くことができる。
しかし、推論、イメージ同定、具体的同定は、文が表す意味がわからないと、基本的に解くことができない。
・RST測定するスキル ⑥具体的同定…定義を読んでそれと合致する具体例を認識する力
人は成長の過程で、既知の語彙との関係性から徐々に新しい語彙を獲得していく。
1つは、たくさんの例文から「だいたいこういう意味かな」と帰納的に理解する方法。
もう一つは「~を…という(と呼ぶ)」という形式で新しい言葉を直接導入する「定義」と呼ばれる方法。
・アクティブラーニングブームの中で、一人も取りこぼさずに学ばせるためによかれと思って考案された様々な工夫が、アクティブラーニング先進国の日本で、なぜ教科書を読めずに卒業する生徒が3割もいるのかの理由の一つではないか。
日本の小中学校、特に小学校は世界一生徒の意見を聞き、版活動(グループ学習)をすることで知られている。
近年、東南アジアや欧米の学校でも、グループ学習が活発に行われているが、そのそものモデルが日本だ、ということが多くある。
日本の学力があまりに高いので、世界各国の教育関係者が1980・90年代に盛んに日本に視察に来て、班活動に注目した。
現在、それが「アクティブラーニング」という名前で逆輸入されているが、日本の学校、特に小学校はもともと欧米の学校に比べてアクティブだった。
隣の子を真似することで授業をやり過ごしている生徒は、多くの場合、論理的な考え方が身についていない。
小学校の中学年の段階で論理的に考える習慣を身につけさせることが非常に大切。
そのためには、消しゴムで消さずに「根拠を持って誤りを自覚し、適切に修正できる」ように支援することが重要。
小学生はまだ自分をコントロールするスキルが十分に身に付いていないことが少なくない。
字を乱暴に書いたり、桁を合わせて計算するのが苦手だったり、ドリルの問題を正確にノートに写せなかったりする。
だからといって、あらかじめ桁を合わせた問題をドリルの上で解かせては、中学に上がったときに真っ白な計算用紙で自力で計算できない。
子供の発達はまちまちなので、補助輪が不要になった生徒から、ノートや白い計算用紙で計算できるようにしていかなければ、生徒は伸びなくなる。
小学校では「効率よく算数や漢字や、重要キーワードを覚えさせる」ためのドリルやワークシートを多用するのではなく、まずは自分の気分や力加減をコントロールしながら作業に集中できるようになることを目指したほうがいい。
その中には、筆算の桁をそろえることや、板書を正確にある程度の速さでノートに写すことや、手順書どおりに実験をしてその結果を見たとおりに記録することが含まれる。
意味を理解しなければ、板書を写し終えることはできない。
板書を写すには、意味を理解しなければならない。
穴埋め式プリントは「一人も取りこぼさないようにして、全員が十分に考え、議論をする時間を確保するため」に考案され、広まりました。
しかし、その思いやりによって、生徒が文章の意味を考える(ことによって写す時間を短縮しようとする)機会を奪うことにもなった。
小学校のうちに1時限分の板書を写せるようになることを目標とするのが妥当だと私が考える根拠はそこにある。
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