「どきん」を考える

ブログ

2024.04.10 発行
実感教育メルマガ2347号

諸事情により、急遽、谷川俊太郎
の「どきん」の授業をすることに
なった。

授業準部が不十分で、授業は全く
深まらず、しかも尻切れのように
なってしまった。

なんかくやしい。
だから、帰ってから少し考えた。

 どきん
         谷川俊太郎

さわってみようかなあ つるつる

おしてみようかなあ ゆらゆら

もすこしおそうかなあ ぐらぐら

もいちどおそうかあ がらがら

たおれちゃったよなあ えへへ

いんりょくかんじるねえ みしみし

ちきゅうはまわってるう ぐいぐい

かぜもふいてるよお そよそよ

あるきはじめるかあ ひたひた

だれかがふりむいた! どきん

区切りのない1連の詩だが、内容的に
は2つに分かれるだろう。

たおれちゃったよなあ えへへ

までが前半、

いんりょくかんじるねえ みしみし

からが後半だ。

この詩には明確なリズムがある。
音数を数えてみれば分かる。

4 6 4
3 6 4
4 6 4
4 5 4
3 6 3

4 6 4
4 6 4
3 6 4
3 6 4
4 5 3

このリズムを意識すれば、軽快に音読
することができる。

軽快=楽しく、だ。

しかも、はっきりと韻を踏んでいる。
それも、ほとんどア行で終わっている。

母音で終わっているのだ。

こういうところもおもしろい=楽しい。

各行の末尾の擬態語部分が、

前半の最後は「えへへ」
後半の最後は「どきん」

となっていて、この2行だけ擬態語で
はないのも、2つのブロックに分かれ
る理由だ。

さらに、前半は、

触ってみよう
押してみよう
もう少し押そう
もう一度押そう

というように、何かある対象物への話
者の働きかけが述べられているのに対
して、

後半は、

引力感じる
地球は回っている
風も吹いている

というように、対象物から離れて、も
っと視野を広げ、自然や自然の法則に
目を転じているのも理由だ。

このある物は、

つるつるしていて
押すとゆれるもので
強く何度も押すと崩れてしまう
がらがらと音を立てながら。

それはいったい何かを詮索することに
意味はない。

そういう物なのだ。

なにかある具体物かもしれないし、抽
象的な概念かもしれないし、自分かも
しれないのだ。

倒れたのが自分ならば、地面に横にな
って引力を感じるだろうし、

地球と接したまま時間が経てば、地球
が回っていることも実感するだろう。

そしてふと気づくと風が吹いている。

ああそうか。
自分はこの自然の中で生きているのだ。

よし、寝転んでいないで歩き始めてみ
るか。

でも、目立たないようにひたひたと。

そうしたら、今まで自分のことしか眼
中になかったのに、周りには人がいる
ではないか。

そして、その中の誰かがこっち見た。

どきん。
ああ、びっくりした。

なんて、詩の意味を考えることにとら
われてはならない。

詩が、その意味に必要以上にとらわれ
てはならないのだ。

意味を追うことだけが詩を読むことで
はない。

作者は、その詩の向こう側に、作者の
「夢」や「理想郷」や、どうにもでき
ない「思い」を見ているのだ。

それを感じることが大切だ。
言葉とリズムと文字を通して。

「どきん」はひらがなばかりだ。

作者はひらがなでしか表現できない何
かを表現しているのだ。

漢字にすると表現できない何かだ。
漢字は意味と強く結びつく。

ひらがなはその結びつきが弱い。
意味に固執しない方がよい。

この解釈が正しいわけではないが、こ
のように詩を自分なりに解釈して読め
るようにするのも、詩を読むことだ。

とはいえ、これは3年生の教材だ。

しかもこの時期はまだ、2年生気分が
抜けていない。

楽しく読むだけで十分だろう。
擬態語、感嘆符は教えよう。

リズムがあることに気づかせよう。
韻を踏んでいることにも気づかせよう。

そして楽しく軽快に音読だ。

それなら、群読がいいだろう。
楽しく群読をしてはどうか。

こんなことをあれこれ考えるゆとりが
あればよかった。

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