2024.04.25 発行
実感教育メルマガ2358号
『詩とは何か』
(吉増 剛造 著)
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を読みました。
ここのところ、詩を授業するとはどう
いうことなのかをずっと考えています。
それで、詩の読み方に関する本をいろ
いろと読んでいますが、
読めば読むほど分かりません。
どの本にも、詩を授業するとはどうい
うことなのかということはおろか、
詩とは何なのか、詩はどのように読め
ばいいのか、も書いてありません。
この本にも、詩とは何かは書いてあり
ません。(題名は「詩とは何か」です
けれども)
正確に言えば、
「詩とはこういうものだ」
という定義のようなものは書いてあり
ません。
詩とは何かを解説しようとしている文
章そのものが詩的であり、
それを理解するのに骨が折れます。
というか、理解できませんでした。
ひとつおもしろかったのは、筆者であ
る吉増さんの詩について、
質問に答える形で、吉増さんご自身が
「どんなふうにして詩が生まれてくる
のか」を解説していることです。
次の詩です。
独立
ただ生きているだけで
生涯一つの言葉にも出会いはしない
その確証がある!
人間、狂うために生れてきたもの
天の星を箒ではくために
今朝も
ぼくは
荘子、逍遥遊篇を投げすてる
そして激しく机上を乱打する
両手をあげて部屋のなかを歩きまわる
一隻の船のように
だれもがそれぞれの作法で
世界を消す
権利を認める
その確証がある
今朝も
ぼくは
茫然と韻をふむ
バッハ、遊星、0のこと
バッハ、遊星、0のこと
両手をあげて部屋のなかを歩きまわる
ぼくはここで死んでゆくのか
一人でワルツを踊るようにして
そしてまた
机上を激しく乱打して
また韻をふむ
くりかえせ、くりかえせ、くりかえせ
バッハ、遊星、0のこと
物語狂め!
ぼくは素足で韻をふむ
水面上で韻をふむ、虹の根元で音をたたく
両手をあげて部屋のなかを歩き回る
…………
数時間すると
二、三人、死人たちが出てきて踊りだす
この詩を読んで、
「なるほど、こういうことか。
いい詩じゃないか」
と考えられる人はすごいです。
私には無理です。
筆者はこう述べます。
「じつは一ヵ月近くも考えてしまった
のですよ(笑)。「詩の発生のメカ
ニズム」というのは、おそらくきっ
と、遡ることのとてもとても困難な
ことなのですね。作者にとっても、
……というよりも、作者には、忘れ
られてしまつている核心らしきもの、
「直観」を探り直すという、とても
困難な、というか、ほとんど不可能
なことになるのです、」
そして、さらにこう述べます。
「やってはみますが、でも「分析」は
きっと出来ないでしょうね。そうで
なければ、詩など書く心持ちにはな
らないのですからね。」
分析など、作者本人にもできないと言
っています。
分析できるようなら、つまり理屈で説
明ができるなら、詩など書く気になら
ないと。
これは、詩を理屈で理解・説明しよう
とするのは無理だと言っているような
ものでしょう。
続いて、こう述べています。
「そして「記憶」にではなくて、「赤
子のような存在」に、そっと尋ねる
ようにしてみましたら、“おまえ、
天の星を箒ではく”つていってるぞ、
“ここが、朧ろな直観の出所だぞ”
という小声がしていました。」
「直観の出所」だとのことです。
理屈ではなく直観です。
直観で「天の星を箒ではく」という言
葉なのか、発想なのか、イメージなの
か分かりませんが、それがまずあった。
そこから詩が生まれたということなの
でしょうか?
また、
「それに、引用していただきました、
最後の行の「死人」が、次の詩の予
告というのか、予兆だったのだとい
うことにも、ここで気がついていま
した。」
ひとつの詩がひとつの詩で完結するの
ではなく、次の詩の予兆になっている
こともあるようです。
「いまあらためて「バッハ、遊星、O
のこと」について問われて、考えて
みると、先ず「0のこと」というイ
メージというよりも、ヴィジョンの
姿形が、思い浮かんだのでしょうね。
それにつれて「0」から裸体の遊星
が、そこに上乗せしてね、「惑星」
では決してなくって、「遊星」でし
た。そして、……「バッハ」が音楽
の象徴のようにして、頭のところに
忖いたようですね。」
「イメージというよりも、ヴィジョン
の姿形が、思い浮かんだ」
のだそうです。
もうね。
イメージであり、ヴィジョンなんです。
理屈ではないのですね。
そういうものがまず降りてきて、そこ
から詩ができあがるのでしょうか。
こうしてみると、詩を読むとは、読者
なりに詩を生み出すのと同じような気
がします。
作者もよく分からないのですから、正
解もないのかもしれません。
詩を、特に現代詩を授業するというの
は、かなり手強いということは分かり
ます。
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